新・実務的生徒指導方針
文部科学省の『生徒指導提要(改訂版)』は、非常に網羅的で理念としては立派ですが、「スーパーマンのような教員」を前提としており、現場の疲弊した状況やリアルな学級崩壊の現場には即応しにくい側面があります。
「誰でも実施可能」で「教員を守りつつ、学ぶ意欲のある生徒を守る」ための、現実的かつドライな『新・実務的生徒指導方針(通称:トリアージ型指導方針)』と、そのアクションプランをご提案します。

新・実務的生徒指導方針:基本理念
「学校は『教育』の場であり、『治療』や『更生』の場ではない」
教員の役割を「学習指導と社会ルールの提示」に限定し、手に負えない事案はシステム(ルールと外部機関)で対応します。個人の力量や「熱意」には依存しません。
1. 3つのコア・ポリシー(判断基準の明確化)
① 教員の「守備範囲」の限定(脱・抱え込み)
- 方針: 教員は「聖職者」ではなく「専門職」である。精神的・物理的許容量を超える指導は行わない。
- 具体策: 「説諭(言い聞かせ)」は2回まで。改善が見られない場合は、個人の指導ではなく「組織対応(管理職・指導専任者)」または「外部対応」へと自動的にフェーズを移行する。
② 「学ぶ権利」の最優先(マジョリティの保護)
- 方針: 授業妨害を行う1人の生徒のために、他の39人の学習権を侵害してはならない。
- 具体策: 妨害行為が発生した場合、説得に時間を割くのではなく、当該生徒を速やかに「別室(学習支援室)」へ移動させる。これは「排除」ではなく、環境を変えることによる「クールダウンと個別対応」と定義する。
③ 役割の完全分離(家庭・学校・警察)
- 家庭: 生活習慣(挨拶、睡眠、食事)、持ち物の管理、躾。
- 学校: 教科指導、集団生活におけるルールの学習。
- 警察・行政: 暴力、窃盗、器物破損、ネグレクト、家庭内暴力。
- ※「学校内での犯罪行為」は、指導ではなく「通報」を原則とする。
2. アクションプラン(誰でもできる運用フロー)
理想論を排除し、フローチャート通りに動けばよい仕組みを作ります。
フェーズ1:教室対応(イエローカード)
- 対象: 授業中の私語、立ち歩き、軽度な反抗。
- アクション:
- 教員は感情を入れず、事務的に注意(1回目)。
- 改善なければ、再度警告し「次は別室指導になる」と通告(2回目)。
- ポイント: 「なぜそんなことをするの?」と心理を探らない。事実だけを指摘する。
フェーズ2:分離対応(レッドカード)
- 対象: 授業の継続困難な妨害、暴言、他者への威圧。
- アクション:
- 担任は授業を止めず、連絡用端末(またはインターホン)で「対応要員(専科教員や管理職)」を呼ぶ。
- 対応要員が当該生徒を教室外へ連れ出す。
- ポイント: 担任は当該生徒と交渉しない。授業を淡々と続けることで「正常な生徒」を安心させる。
フェーズ3:保護者召喚・契約
- 対象: フェーズ2が週に複数回発生する場合。
- アクション:
- 学校での指導限界であることを通知。
- 「授業に参加するための条件(静粛にする、着席する等)」を明文化した合意書に、生徒・保護者・学校の三者で署名する。
- ポイント: 「頑張らせます」という精神論ではなく、「約束を守れない場合は家庭学習または別室登校」という条件闘争にする。
フェーズ4:外部委託(ブラック事案)
- 対象: 暴力、器物損壊、執拗なイジメ、法に触れる行為。
- アクション:
- 即時に警察へ通報(スクールポリス制度の活用、なければ所轄へ連絡)。
- 家庭環境に起因する場合は児童相談所へ通告。
- ポイント: 「学校の恥」と考えず、「社会のルール」を教える教育の一環として警察を入れる。教員が謝罪したり、防波堤になったりしない。
3. 導入に向けた準備(教員を守るためのツール)
高度なスキルがなくても運用できるよう、以下のツールを用意します。
- 「指導・警察連携ボーダーライン表」の策定
- 例:机を蹴る(指導)、窓ガラスを割る(警察)、教師を突き飛ばす(即110番)など、迷わず判断できるリストを全校配布。
- 定型文(スクリプト)の共有
- 保護者からのクレーム(「うちの子の話を聞いてくれたのか」等)に対し、個々の教員が言葉を選ばなくて済むよう、「授業の継続性を優先しました」「規定に基づき管理職に引き継ぎました」という統一回答を用意する。
- 「シェルター機能」の設置
- 空き教室を確保し、授業に入れない生徒が自習する(あるいは単に過ごす)場所を確保。ここには教員免許を持たない外部人材(地域ボランティアや退職教員)を配置し、担任の負担をゼロにする。
この方針のメリット
- 教員のメンタル保護: 「自分の指導力不足」ではなく「システム上の対応」と割り切れるため、自責の念やストレスが激減します。
- マジョリティの学習権保証: 真面目な生徒が、問題行動を起こす生徒に怯えたり、授業を中断されたりする理不尽がなくなります。
- 家庭の責任感醸成: 「学校がなんとかしてくれる」という甘えを排除し、家庭での躾の重要性を再認識させます。
この方針は「冷たい」と批判される可能性がありますが、「現在の崩壊しかけている教育現場を持続可能にするための緊急避難的措置」として導入する価値は十分にあります。
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